20160926 「レポート再録 001」 昔書いたレポートを載せます。

 

(このブログは、皆様の幸せと共に(どちらかというと)私の「記憶の再生=ボケ防止」のために作られています。)

 

     「宿泊施設「とほ宿」の戦略」 

                 平成14年7月29日、平成18年6月27日改

1 とほ宿とは:

北海道(一部、沖縄、九州等にも存在)に存在する、民宿の一種。

一泊二食付で3500円~4800円 基本は、男女別の部屋で、相部屋、部屋数は、3~5部屋で、一部屋4人~8人位、形態としては、ユースホステルと民宿の間の形態で、一部ペンション的要素もある。旅館業法の施設の構造設備に関する政令基準の簡易宿所営業適用と思われる。

平成13年現在 北海道内に 約65 軒 全国で 約12  軒

オーナーは内地出身で元北海道旅行者が多いとのこと

1985年北海道旅人宿紹介冊子「徒歩」第一号発行 

2 商品力:

  • 安さ:一泊二食4000円前後
  • 会話:自転車やオートバイによる一人旅の旅行者にとっては、会話のできる空間
  • 料理のうまさ:北海道の農畜産漁業の素材を活かした料理が自慢(例外もある)
  • 旅情報:オーナーや同宿の旅行者が持っている、最新の、現場情報が聞ける
  • 地域情報・生活情報:オーナーの趣味、生活、地域情報が聞ける 

3 販売促進戦略:情報提供と囲い込みを、お金をかけないで実施

①ひとり旅を楽しむための宿情報誌「とほ」ガイドブック定価400円(発行 とほネットワーク旅人宿の会 2年に1度 部数不明)北海道内観光地、紀伊国屋書店等で販売 住所、地図、各宿の特徴(景色、料理、趣味、オプショナルサービス、体験ツアー、サービス、売り物・オーナーの思いや趣味など)と、各種割引クーポン付き 利用者の声の欄⇒本ガイドブックを核にした「口コミ」戦略

②リピーターへのサービス:5泊以上シールプレゼント、10泊以上愛称と記念品とスタンプ贈呈、年数回の東京等での宴会への招待など

お友達紹介のサービス券発行

④その他のサービス:宿・駅までの送迎、温泉への送迎、情報誌の発行

情報誌の発行:「とほ」のほか、宿主たちの旅案内「なまら蝦夷」 現在、3号まで発行  情報誌を通じたネットワークにより情報発信力が向上、信用力も増す  特に一人旅派に支持を受ける 

4 マネジメント上の特徴:

  • 北海道の愛好者(元旅行者)が自分の、一番好きなところで、宿をひらく
  • 兼業が多い:農業、漁業、水産業、アウトドアスクール等
  • ネットワークの活用:食材の仕入れ、同業との情報交換、
  • 一人旅優先:カップル、グループは後回し
  • 長期滞在者の従業員化:いそうろうヘルパースタッフ
  • 古家の活用が多い:買う、借りる、改造する 

5 利用事例:

  • 自転車、オートバイの一人旅が多い
  • ビジネスホテルに飽きたサラリーマンもたまに
  • 毎年3週間、クラウンでとほ宿めぐりを趣味にしている中年社長らしき人物もいる 

6 地域の魅力としての宿泊施設:

⇒地元民は宿泊施設にあまり関心を持っていないが、訪問者は、宿泊施設・宿泊形態には大きな関心を持っている。

○とほ宿は、北海道(若者、旅、夏休み、自然・・)の地域性が生んだ宿泊施設形態である。宿のオーナーの個人的な思い(北海道に住みたい、その良さを広めたい(このオーナーの地域に対する思いが、一番の商品力と思われる)、YHの堅苦しさは嫌いだ、カップルの遊び場にはしたくない、緩やかなネットワークを作りたい・・)から始まり、お金をかけずに、お客の支持を得る工夫を重ねてきたシステムである。

○宿泊施設を集客装置(=集金装置)と考えるか、コミュニケーション、ホスピタリティの実現の場と考えるか(ライフスタイルからの提案=価値観の提案)でレベルが変わってくる。地域内でのネットワークも重要であり、自分の宿だけのいいとこ取りは長続きしない。

○ヨーロッパのB&Bには、旅行者と年金生活者のライフスタイル(≒価値観)の一致がある。

日本のグリーンツーリズムアグリツーリズム)も、減反対策や過疎対策という「対策」からの発想ではなく、農村生活の素晴らしさの共有という「みんなハッピー」の発想から見直すと楽しい。

イギリスのカントリーハウス。

○仙台モデルはあるか?:

  • 一般の宿泊施設(来る客への対応):通常のビジネス、旅行、コンベンション等のニーズに応える宿泊施設
  • プラスαの宿泊施設(お客が来仙する理由の1つになる宿):アーバンリゾート、フィルムコミッション、観劇、研修のバックアップ等
  • 他事例:

・料亭の庭にB&B:料理は市内のレストラン等を紹介 大分県臼杵市

・湯布院:すべての部屋が離れの温泉旅館

・都会の中のペンション:ビジネスホテルのつまらなさをカバー⇒地元民との会話

・料金は正規料金で領収書も正規の金額だが、ポイントでキャッシュバックのホテル:古川市

・中高年向け、ボールルーム(社交ダンスのホール)がある旅館

・ショー、サーカスをゆっくりみせるホテル:ラスベガス

・見晴らしのよいジャグジー、エステが売り物のホテル:福岡市 シーホーク、松島一の坊

・オートキャンプ場:素晴らしい景色と温泉と行き届いた施設の組合せ

・イギリス:ナローボート停泊地:ボート停泊場所と良いパブの組合せ

・ゲストハウス:京都東寺庵 世界中から顧客と相部屋1泊2000円浴場+居酒屋とのネットワーク 夜呑み放題、朝パン食べ放題

・「東講商人鑑」:無明舎から復刊 江戸時代の商人ネットワーク 会員制の情報

・アメリカン・エキスプレス:信用のネットワーク 会員制ビジネスのバランス

・都市部のゲストハウス:相部屋(一部個室もあり)、トイレ、風呂、台所、応接室等は共用。敷金礼金など不要の、中長期滞在型の下宿。東京等で増えてきている。

 

※とほ宿ホームページ:http://www.toho.net/

 

⇨ 以前から、東京や京都では「ゲストハウス・安宿」が話題になっていました。最近は農家民宿、特区民泊などさらにいろんな形の宿泊所が出てきました。YHも高齢者の利用が増えてきているようです。料金の安さというよりも、人との出会い・交流を求めているのだと思います。「交流」の

 

写真(本文とあまり関係ありません):北九州市 文庫本専門古書店

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